頌栄の森 〜教員のひとり言〜

100年前のパンデミック

2021年10月
院長・学長 棟方 信彦 先生

2021年の6月に新教出版社から「100年前のパンデミック」のタイトルで日本のキリスト教がスペイン風邪とどう向き合ったかをテーマにしたパンフレットが出版された。その目的は100年前の状況を振り返り、日本のキリスト教界の対応を確認し、今日のコロナ禍にある私達への教訓を得ようとするものだ。興味深いと思われるのが、日本のキリスト教の歴史においては、スペイン風邪についての各教団やキリスト教学校の組織的対応の報告は見いだせないという見解。世界的にも日本国内でも深刻な被害をもたらした状況下にあったはずだが、消息的な報告を除けば、信者の生活や礼拝への影響や対応について触れたものがほとんどないということだ。
そんな中、キリスト教学校の数少ない例外的な資料として、頌栄の学生のスペイン風邪罹患による逝去記事が、貴重な報告として取り上げられていた。頌栄保育学院の歴史をまとめた『幼児教育の系譜と頌栄』にも、創立30周年を翌年に控えた1918年、「流行性感冒が伝習所にも入りて12名の生徒を冒せり、ハウ教師もその冒さるる処となりたり。」とし、「優良生3名」の死亡を伝えている。悲しみにあって、年の瀬の頌栄では、幼稚園でも伝習所でもクリスマスの祝会を中止したという。
考えてみれば、スペイン風邪による全国の死者は45万人との報告もあり、キリスト教学校での被害が頌栄だけとは考えにくい。何故頌栄だけが100年もこの出来事を伝え続けてきたのか?不思議な興味を思い起こさせることだ。